ここでは精神障害を持つ方の中で、就労継続支援B型のサポートを受けて就職した事例を紹介します。精神障害は人によって症状や悩みが異なるため、就職に向けて個別の支援が必要です。さまざまなケースを参考にしてみてください。
(40代男性・双極性障害)
保険会社の総務として、毎日朝から晩まで仕事に励んでいたビジネスマンの男性。いつからか仕事へのやる気がなくなり、常にイライラしてしまうことで「周りの人に迷惑をかけているのでは」と悩むようになりました。
会社からの提案で病院を受診することにした男性は「双極Ⅱ型障害」の診断を受けます。双極Ⅱ型障害は「躁うつ病」とも呼ばれる双極性障害の中でも症状が軽いほうではありますが、再発の可能性が高い障害でした。
男性は会社を退職した後、自身の障害を理解したうえで働くことができる仕事を探すため就労支援を受けることに。障害について学びながら就職活動を続けましたが、不採用を続き悩む日が続いたようです。それでも周囲の人を不安にしたくないと元気にふるまっていました。支援を受けながら就職活動を続けた結果、障害について理解のある会社へ就職が決定。現在では精神状態も安定し、元の真面目で謙虚な性格で職場に馴染んでいます。
(20代男性・統合失調症)
前職が飲食業だったという男性。病気とは思っておらず、精神の不安定さやうまくいかない人間関係に悩みながら仕事を続けていたそうです。病院で統合失調症の診断を受けてからは周囲の反応に敏感になり、被害的に感じてしまうことが多くなっていました。
自分らしい働き方をするため就労支援を受け始めた男性。ビジネスマナーから履歴書の作成、ワークショップまで幅広いプログラムをこなしました。
最初は症状が安定しない日が多く体調を崩しがちでしたが、就労支援が進むにつれて定期的に通えるようになってハローワークで求人を探せるまでに。そして採用面接を経てアミューズメント施設への就職が決まりました。定着支援では企業の担当者に男性の状況を伝え、シフト面での配慮など通いやすいような環境に調整。今では統合失調症とうまく付き合いながら仕事に励んでいるとのことです。
(40代女性・気分障害、うつ病)
コミュニケーション力が高く周囲への気遣いもできる女性。しかし気分障害を患っていることから、自分の症状が就職活動の妨げにならないように就労支援を利用して訓練しようと決めたそう。
就労支援では通常のカリキュラムに加え、コミュニケーションが必要な場面をロールプレイング形式で事前に練習する「ひとりSST(社会技能訓練)」を行いました。結論から話すことや短くまとめるスキルをコツコツ鍛えた女性は「ヘルパー資格を活かしたい!」という希望もあり、就職活動では介護の仕事のみを選択。自分で希望する事務所を見つけ、面接のときに障害を開示するか悩みながら就職活動を進めました。就職活動は見事成功し、現在は都内の介護施設で働いています。元々コミュニケーション能力が高かった女性ですが、ひとりSSTで努力を重ねたことも手伝って人付き合いや仕事がうまくいっているそうです。彼女の「相手の立場になって考える姿勢」が就職につながったのかもしれません。
(30代男性・うつ病)
システムエンジニアとして働きづめの毎日を送っていたある日、体調を崩してうつ病を発症した男性。療養して回復のきざしが見え始めたことをきっかけに、再就職を考えはじめました。
主治医からは「就職を目指すなら、リハビリからはじめたほうが良い」と勧められ、就労支援を実施。他の利用者からの良い影響を受けながら就職活動に励んだ結果、前職で培ったパソコンの知識を活かせる人材派遣の会社への就職が決まりました。
当初は「1日でも早くフルタイムで働きたい!」という強い思いから無理をしてしまい、体調が振るわず欠勤が続く時期も。サポートが必要だと感じた就労支援サービスのスタッフは、主治医と職場の社員を交えた会議を行い男性の勤務時間や日数を見直しました。
労働環境を調整したことで、男性は適正量の仕事を再開できるまでに回復。就労支援ではただ就労までをサポートするのではなく、定着するまで力を貸してくれることがわかる事例です。
うつ病や統合失調症などの精神障害をきっかけに一度仕事から離れた経験を持つ人は、一生けん命働いていた頃の自分と精神障害を持っている今の状態の違いに不安を覚えることも多いでしょう。事例のように就労継続支援B型を利用して就職を目指すと、就職までに必要なスキルを伸ばせるだけでなく、就労を継続できるように関係者同士で連携して職場環境を改善してくれます。「もう一度働きたい」、「生きがいを見つけたい!」という人は、二人三脚で頑張ってくれるスタッフのいる就労継続支援B型事業を利用してみてはいかがでしょうか。